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Seminer

全ての人に知ってほしいこれからの医療のカタチ【統合療法コンベンション2021】

ボタラヴィ21年6月Topics

「統合療法コンベンション2021」が、去る4月29日に東京にて開かれました。初のYouTubeライブ配信が実施され、オンラインを通して多くの参加者が新たな統合医療に触れる機会となりました。本誌では、開催の様子をダイジェストでお届けします。

統合療法は現代病に不可欠

統合療法と聞くと、がんや難治性の疾患に対する専門的な治療法だと感じている人は少なくないと思います。しかし近年ではアレルギーやうつ病、心疾患、糖尿病、不妊症などの治療法、予防法としても注目されています。
今回のコンベンションでは、薬だけに頼らない、副作用や体への負担の少ない療法について、6名の医師・専門家がそれぞれの知見を発表しました。
まずは、コンベンションの主催者である森山晃嗣会長が開会挨拶を述べた後、講演をスタートさせました。森山会長は、正常分子栄養学を専門とする傍ら、故・小南奈美子医師(米国)の「マインド(こころ)」に関するプログラムを受け継ぎ、長年にわたり研究、実践を続けており、今回は「病は気から」と題し、こころと身体の関係について講演しました。
ストレスを受けたり感情が変化することにより、血流が変化したりホルモンなどの物質が作られるなど、こころが肉体に与える影響を生物学的に示し、感情のコントロールや自分自身を注意深く観察する重要性を示し、感情などを癒すプログラムを紹介しました。
2番目には、動脈硬化の治療をテーマに新井圭輔先生が登場しました。動脈硬化は、血管の内腔を狭めることから高血圧の主な原因とされており、心臓病や脳梗塞などのリスクを高めると言われています。
新井先生は「活性酸素」や「LDLコレステロール」を動脈硬化の要因とし、活性酸素が発生する原因として「インスリン高値」を挙げました。
糖尿病の治療で動脈硬化が進行し、さらには合併症で足の壊疽などが起きることについて「高インスリン療法」に問題があるとし、自身が提案する低インスリン療法と糖質制限、必要最低限の薬物を組み合わせた治療について解説しました。これらの療法では、「動脈閉塞を予防でき、心筋梗塞、脳梗塞のリスクも大幅に軽減する」ことがわかっており、後半でスクリーンに映し出された実例の数々に、参加者は関心を示していました。

薬がうつ病を加速させる

今回初登壇の高橋徳先生は、近年患者数が激増しているうつ病と、精神医療の実態に言及しました。1999年ごろには204万人だった精神疾患の患者は、2017年で419万人と倍以上に増えています。うつ病は、「環境因子(家庭、職場、学校など)」と「脳活動」の異常からくるこころの病気とされていますが、今の医療は、主に脳活動を改善することに目が向けられており、結果として向精神薬で対処しているのが現状です。向精神薬である抗うつ剤や精神安定剤などを服用すると、今までは無かった別の症状が起こり、さらに薬が増え、最終的には、数十種類の薬を処方されている患者も少なくありません。
高橋先生は「うつ病の薬の処方が増えた1999年からうつ病患者が急激している」こと、「世界人口の2%である日本が、世界の薬剤費の40%を消費している」実態に触れ、「薬漬け大国」になっている日本の医療に警鐘を鳴らしました。
高橋先生が精神疾患の治療として推奨するのは、鍼や瞑想、禅、ヨガ、太極拳、気功などを取り入れた統合療法です。鍼の治療では、オキシトシン(愛情ホルモン)が増え、ストレスホルモンが減少するマウス実験を発表し、食事の面では特に「ミネラル」がうつ病の改善に役立つと強調しました。
「たんぱくリッチ食」を推奨する宗田哲男先生の講演も注目を集めました。宗田先生は、現代人のタンパク質の摂取量は、1950年前後よりも少なくなっていると訴え、それが不妊症をはじめ、低出生体重児の増加、産後うつなどの原因になっていると述べました。タンパク質の摂取量が減っていることについて、1995年以降激増した清涼飲料水、スイーツなどの糖質の多い食事を要因にあげ、健康な妊娠・出産、子育てには、タンパク質と脂質(ケトン体)が不可欠であるとアピールしました。
講演の終盤では、もう一つの重要な栄養素として「鉄」を取り上げ、不足すると貧血で産後うつのリスクが高まることや、現代の女性が鉄不足に陥っていることなどをデータで詳しく解説し、宗田マタニティクリニックで提供する食事や栄養指導について紹介しました。

慢性疾患を改善する療法

最後のブロックでは、青山セントラルクリニック院長の田井真愛(たのい・まさえ)先生が「6スポット療法」について解説しました。6スポット療法を一言で表すなら、「急性・慢性の炎症を抑え、鼻の機能を改善し、自律神経を整える治療法」。鼻粘膜や副鼻腔、鼻咽頭、扁桃などの6つのスポットを刺激する療法で、様々な疾患や慢性症状が治癒すると話題を集めている療法です。
適応疾患としては副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、中耳炎、扁桃炎、いびきなどで、これまでにアトピー、頭痛、喘息、リウマチ、うつ病、肩こり、潰瘍性大腸炎などにも効果が確認されています。田井先生は、実際の治療の映像を公開しながら、原因不明の咳に悩まされていた50代女性、目のかすみ・めまい・偏頭痛がある28歳男性の改善例を交えて講演しました。終了後には、「実際にやってみたい」といった声が多数寄せられました。
トリを務めたのは、がんコントロール協会顧問ドクターの秋山真一郎先生です。「がん治療における必須の栄養サポート」をテーマに、がんの栄養療法の原則として炭水化物と塩分を極力少なくすること、さらにはタンパク質、植物由来の栄養素、ミネラルを十分にとる必要性を訴えました。治療が難しいスキルス胃がんを栄養療法で克服した症例を紹介し、これからのがん治療に希望を与えました。
新型コロナウイルスに翻弄される中、数多くの現代病に悩まされる人が増え続けています。身体に起きる疾患や症状は、最終的には自分自身の免疫機能や自然治癒力にかかってきます。今回のコンベンションでは、統合療法の多くはそれらの働きを手助けすることにつながるものであることが印象に残りました。安全、安心な治療法を自分で選ぶ。そんな医療が近い将来、当たり前になることを改めて感じさせられました。

Topics 2021年6月号PDF