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Seminer

妊娠中の栄養管理が、子どもの発達障害を防ぐ?

ボタラヴィ21年2月Topics

今、日本で子どもの発達障害、またはその疑いが指摘されるケースが増えているのをご存知でしょうか?なかでもLD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)は、調査対象になった平成18年と令和1年のデータ比較で、それぞれ16倍、15倍にも増えているというのです。その背景の一端を探ってみました。

発達障害が増えている

まず下図を見てください。文部科学省の直轄研究所である国立特別支援教育総合研究所発達障害教育推進センターがまとめたもので、いわゆる発達障害の推移を示しています。
データは、通級指導教室による指導を受けている児童数の変化を表しており、障害種ごとにみてもそれぞれ増加傾向にあることがうかがえます。とくにLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)は、調査対象になった平成18年と令和1年のデータと比較すると、LDは16倍、ADHDは15倍にも増加していることがわかります。
このデータは、あくまでも教育現場の調査結果がベースになっており、医学的な研究や知見が反映されているかどうかまでは、必ずしも読み取れません。ただ子どもたちの「脳の発達」に、何か異変が起こっていることは容易に想像がつくと思います。

通級による指導を受けている児童生徒数の推移

通級による指導を受けている児童生徒数の推移

障害種別の通級による指導を受けている児童生徒数の推移

障害種別の通級による指導を受けている児童生徒数の推移

発達障害かも?と思ったら

子どもの行動や仕草には、いろんな要素が考えられますが、実は毎日の食事内容が関係していると考える専門家は少なくありません。
広島県にある「ふじかわ心療内科クリニック」の藤川徳美院長は、うつ病をはじめとした様々な精神疾患を、食事指導と栄養素療法で改善している精神科医として知られています。藤川院長の著書には、発達障害の疑いのある子どもたちが数多く来院し、食事の改善と栄養素療法によって改善した実例が紹介されています。
その中で、藤川院長は「成長過程の子どもに対し、単にうつだと診断すべきでは無い」と指摘しています。
発達障害と診断された子どもであっても、もしかしたら脳に必要な栄養素が欠乏しているだけなのかもしれない。藤川院長は、そう考えて食事や栄養が、子どもたちの発達過程にどのような影響を及ぼしているか。日々の診療から探っています。

妊娠中の低栄養による影響

もう一つ、発達障害の子どもが増えている理由として、妊娠中の母親の低栄養と関連づけて考える専門家もいます。
現在日本では、少子化により出生数は横ばい、または減少傾向にありますが、低出生体重児(2500g以下で生まれる子ども)は、増加しています。その理由として、妊娠前の女性たちの「痩せ過ぎ」が大きな問題としてクローズアップされています。痩せた状態で妊娠することによって、胎児に十分な栄養が行き渡らず、赤ちゃんの体重が伸びない原因になっていると考えられています。
他にも、母親の貧血による酸素不足、母親が十分な栄養を摂っていない、喫煙(母親の喫煙はもちろん、家族の喫煙も影響)、早産、多胎妊娠などが挙げられています。
出生体重は、赤ちゃんの栄養状態を見る一つの指標ですが、極端な低体重で生まれた場合、臓器形成の異常や代謝機能の変化などが起こる可能性も指摘されています。
イギリスのサウザンプトン大学医学部教授のデイヴィッド・バーカー氏が提唱した「生活習慣病胎児期起源説」によると、胎児期に低栄養にさらされると、遺伝子発現制御系の変化によって代謝機能に異常が発生し、将来糖尿病や高血圧、肥満や循環器系の疾患にかかりやすくなることが報告されています。
そして近年指摘されているのが、低出生体重児と発達障害の関係です。妊娠中の低栄養・低酸素が脳の発達にも影響している可能性が高いことがわかってきています。

出生数・出生時2,500g未満の出生割合と推移

出生数・出生時2,500g未満の出生割合と推移

鉄欠乏が母子の健康を脅かす

前述した藤川徳美院長は「発達障害の症状で来院する子どもだけでなく、その母親も同じように栄養が欠乏している」と関連づけています。
両者に共通しているのは、タンパク質、そして鉄分の不足です。子どもだけでなく、母親にも血液検査を実施すると、この2つが欠乏しているケースが多いそうです。そこで藤川院長は「糖質を制限し、高タンパク食に変え、欠乏している栄養素をサプリメントなどでしっかり補うことで、子どもの症状や母親の健康状態だけでなく、両者の精神面も改善される」と訴えます。
日本で妊産婦の死亡原因で最も多いのが「自殺」であり、その原因のほとんどが「うつ病」であると言われています。
国立成育医療研究センターの調査報告によると、産褥期に貧血があった場合、貧血がない女性と比べると産後うつを発症するリスクが約6倍も増えるとしています。
妊娠中は多くの血液を赤ちゃんに送るために血液の量が増えます。その血液を増やすために必要な栄養素が「鉄分」です。妊娠中に貧血があると十分な栄養を赤ちゃんに与える事が出来ないことから、お母さんの健康状態を維持するには何より鉄分が必要です。
特に妊娠後期になると鉄分の必要量は増えるため、貧血にならないように鉄分が多く含まれる食事や、サプリメントなどから補充することが大切です。鉄分はお母さんだけではなく、赤ちゃんの脳の発達にも欠かせない栄養素であり、産後ママの「産後うつ」の発症リスクを抑える栄養素ともいわれています。
妊娠後はつわりなどで食べられなくなるケースもあるため、妊娠前から貧血対策をすることは、赤ちゃんはもちろんママの心身の健康を守ることにも繋がります。まずは今の食生活を見直してみましょう。
精製された糖質の摂取が多く、肉や魚、卵や豆類などのタンパク質や野菜が不足している方は鉄欠乏の可能性が高まります。
また、幼児期は男児の方が鉄欠乏になりやすく、それが原因で落ち着きがない、奇声を上げるなど精神的に不安定な症状が出る事があります。身体が大きかったり、運動量の多い子はその分エネルギーの消費が激しく、鉄分を消費しやすい傾向にあります。
ADHDなどの症状は鉄欠乏の症状にも似ているので、まずは砂糖などの糖質の摂取を制限し、鉄分を強化した食事やおやつに切り替えるなどの対策を取ることをお勧めします。
ボタニック・ラボラトリーでは、栄養相談も承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

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