新型コロナウイルスによる感染が、ようやく収束の兆しをみせています。しかしウイルスへの警戒を怠ることなく、第二波、第三波に備えた対策も不可欠です。本誌では、ウイルスの新たな特徴について秋山真一郎先生に緊急取材、今後の対策などについて聞きました。
新型コロナウイルスへの感染は、高齢者や基礎疾患がある人だけではなく、最近は10代や20代、30代など若い層でPCR検査の結果、陽性になる人が目立っています。ウイルスが引き起こす疾患についても、肺炎などに加えて下痢や嘔吐などの胃腸障害、肝臓障害、腎臓障害、心臓や脳、末梢血管系にダメージを及ぼす例も多く見られます。
国が奨励する「手洗い」「3密を避ける」「ソーシャルディスタンス」の徹底はもちろんのこと、医学的には有効な治療薬やワクチンの開発が待たれるところです。
総合内科専門医で、本誌でもおなじみの秋山真一郎先生は、有力な治療薬の一つとして急性膵炎などの治療薬である「ナファモスタット」に注目しています。
この薬は、感染の初期段階であるウイルスの外膜と、感染する細胞の細胞膜との融合を阻止し、ウイルスの侵入を効率的に防ぐ「感染予防薬」として期待されています。
秋山先生は「日本で開発され、すでに臨床で20年以上にわたって使われており、副作用も少なく十分な臨床データが蓄積されています」と、安全性を強調します。
もう一つ、コロナ対策で重要なのは普段の食事や栄養です。秋山先生は「血糖値が高いと、白血球の動きが悪くなり、ウイルスが入り込みやすくなる」と指摘します。
たとえば、普段から糖質や小麦粉を使った食事が多いと、血糖値は上がりやすくなります。当然血液の質が悪くなり、免疫をつかさどる白血球が働きにくくなります。
新型コロナウイルスは、ACE2(アンギオテンシン変換酵素Ⅱ)というタンパクの受容体に、素早く結合して侵入する特徴をもっています。
肺や気管支、血管にはこのACE2が多くあることから、ウイルスが大量に侵入すると、リンパ球などの動きを抑制し、免疫が正常に機能しずらくなることがわかっています。重症化すると、医学的にはサイトカインストームという免疫の暴走が起こり、重篤な肺炎や血栓による心筋梗塞などを引き起こす要因になるとされています。
今回、秋山先生がコロナ対策として最も大切だと強調するのは「免疫細胞が正常に働くための栄養摂取」の重要性です。なかでも、炎症を抑え、肺や気管支など気道の粘膜を強くする働きがあるビタミンDの摂取を呼びかけます。
ビタミンDには、 ①サイトカインストームのリスクを軽減 ②抗炎症サイトカインを増やす ③気道の粘膜を強化する ④抗菌ペプチドを増やす の4つの働きがあるとされています。
ただし、ビタミンDは、普段の食事からなかなか必要な量が賄えないのも事実。一般的には、干しシイタケの摂取や紫外線を浴びるのが良いとされますが、それで十分な量は確保できませんので、サプリメントで補充します。
その際、注意したいのはビタミンDを過剰に取りすぎてしまうことです。過剰摂取は、腎臓への副作用が懸念されるので、それを防ぐためにビタミンKのサプリメントを一緒に摂ることをおすすめします。
新型コロナウイルスを重症化させないおおよその目安として、ビタミンDは10000~15000IUほど摂取することが理想的とされています。これだけの量を毎日摂取するのはなかなか難しいので、秋山先生は、他の栄養で補うことも可能だとしています。
「②に関しては、オメガ3系の油も有効で、抗炎症作用を高める働きをします。③についてはビタミンAも同じ効果が期待できます」
ちなみにビタミンKは、納豆やボタラボグリーンにも含まれています。いずれにしても、体の免疫機能を強化するには、ビタミンDとK、A、そしてオメガ3系の油をしっかり摂ることが大切です。
第二波、第三波に備えて、免疫力を高め、腸内環境を整える食事を常に心がけてください。