「第25回統合療法日本がんコンベンション」に来日した、アントニオ・ヒメネス医師(通称:トニー)が、去る12月4日、ボタニック・ラボラトリーの招きで特別セミナーを行いました。ボタラボ会員向けに最先端のがん治療などを紹介、日本では滅多に見られない単独セミナーに多くの人が詰めかけました。本誌では、今号と次号の2回にわたりその内容についてダイジェストします。
「がんは、どんな状態でも快気することは可能です。」Drトニーの講演は、のっけからそんな一言で始まりました。統合療法の本場メキシコのティファナとカンクーンで、統合医療専門のクリニックを開設するDrトニーのもとには、末期がんや治療法がないと見放された、いわゆる「がん難民」が世界中から訪れます。
加えて、Drトニーの父親が前立腺がん、25歳になる義理の娘が白血病だったことを告白し、数多くの末期がん患者を危機から救ってきた経験などについて語りました。その大前提として、Drトニーは「どんながんであっても治療と予防のためには、まずがんという病気について知ること」とし、7つの重大ポイントと10の特徴を伝授しました。
Drトニーが取り組むがんの統合療法は、これまで本誌でも何度か取り上げています。その特徴は、毒性のない治療、酸素供給や解毒を重要視した多種多様な治療法にあるといえます。その中から、最新のポイントとしてセミナーでまず強調したのは、がんの怖さは初期症状ではなく「転移」にあるとしたことです。
アメリカ国立がんセンターが1985年から20年間にわたって調査した乳がん、肺がん、大腸がん、膵臓がん、前立腺がんの5つのがんの統計をもとに「転移したがんの5年生存率は26%に落ちてしまう」と紹介し、転移を防ぐことがいかに重要かを示しました。
さらに「がんは知的な集団であり、糖質がなくてもタンパク質や脂質をエサにしてどんどん成長しようとする」と訴えました。Drトニーはそれゆえ、「魔法の銃弾のような一発でがんを倒せるものはない。様々な治療法を掛け合わせることで、体内環境を変えていくことが根本的な治癒につながる」としています。
こうしたがんの特性を知ったうえで、どのように行動、実践するか。Drトニーは治療の最大のポイントとして、転移の原因であるがんの「幹細胞」に着目しました。「幹細胞は、どんな姿にもなれる細胞の元のようなもので、この幹細胞を倒さないとがんは何度でも戻ってくる。再発や転移を防ぐには、がんの幹細胞を倒すことだ」と強くアピールしました。
一つの腫瘍にはおよそ10億個のがん細胞があるといわれおり、その中の1%が幹細胞だと考えられています。しかしたった1%の幹細胞が、免疫に干渉する能力があり、抗がん剤や放射線治療では倒れない性質を持っています。Drトニーが指摘するのはまさにそれで「抗がん剤や放射線治療を受けても数年後に再発や転移が見つかるのは、幹細胞が残っているからだ。がんの幹細胞を倒すために、腸内環境を整える食事や栄養、細胞の健康を保つ水、そして免疫細胞を鍛えることが重要である」と述べました。
Drトニーが取り組む統合療法の中で、がん治療にとりわけ重要だとしているのは「精神面」の問題です。セミナーの後半では、その「がん治療の精神的な側面」を専門に研究する、オーストラリア出身の医師で、脳神経や免疫学、皮膚病などが専門のDrオリビア・レスラー氏が登壇し、がん治療における感情の起伏などについてどう対処すべきか講演しました。
その中で、がん患者は周りの意見に左右されず、まず「直感に従う」ことが大事であると強調しました。直感は自分に与えられたプレゼントであり、日々葛藤しながらも時間の経過と共に自分の運命をコントロールすることや、自分を力付ける環境づくりができるようになることを、実際の患者の事例などを紹介しながら解説しました。
二人のドクターの講演後、会場からの質疑応答があり、それらの回答を交えながら、ボタニック・ラボラトリーの森山晃嗣社長が加わり、三者によるパネルディスカッションが行われました。その模様については、次号で紹介します。