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Seminer

うつや気分の落ち込みは食事と栄養でアプローチ

現代病と食事には密接な関係があるとされています。いま患者が増え続けているうつ病や精神疾患なども例外ではありません。私たちが口にするものが、気分の落ち込みやうつ症状をコントロールしたり、反対に加速させているとしたら… 毎日の食事や栄養を見直すことが得策かもしれません。今回はうつ症状と栄養の関係に迫ります。

うつ病患者が倍に

新型コロナの影響により、ここ数年で社会的に多くの変化がありました。感染予防のためのロックダウンや外出制限などの措置は、多くの人にとって精神的なストレスを伴うものとなり、うつ病や気分障害で精神科を訪れる人は増加の一途を辿っています。

実際に新型コロナ拡大の影響によって、多くの先進国ではうつ病の人の割合が2〜3倍に増えており、日本でも2013年の7・9%から2020年は17・3%と、うつ病患者の割合が2倍以上に増加しています。(出典:経済協力開発機構(OECD) の調査より)

現在の日本でのうつ病や精神疾患の治療法は主に、薬物療法や面談、心理療法(カウンセリング)などが一般的となっています。ほかにも、患者同士でコミュニケーションをとる集団精神療法、家族を交えて話しあいをする家族療法など様々な治療法があります。症状の度合いによって治療法を組み合わせるケースも多いようですが、一般的なクリニックではほとんどの場合、薬物療法が主流になっています。

うつ症状は栄養不足から

近年では、食事や栄養、運動などがうつ病の発症に大きく関わっているという研究データが数多く報告されています。西洋医学だけにとどまらず民間療法や代替療法を組み合わせる統合医療の現場でも、投薬などの対症療法ではなく、体の機能の回復を目指す栄養療法などが取り入れられています。

うつ病の発症には複数の栄養素の不足が指摘されています。例えば、鉄や亜鉛、マグネシウムなどのミネラルです。これらのミネラルは、脳内と心( 精神) をつなぐ神経伝達物質をつくる重要な働きがあります。

鉄は「セロトニン」の合成に欠かせないミネラルです。幸せホルモンと呼ばれるセロトニンは疲労や焦燥感を落ち着かせ、精神のバランスを整える作用があります。産後うつも、出産時の出血に伴う鉄不足が原因の一つと考えられています。マグネシウムもセロトニンの分泌を増やす重要な栄養素です。神経過敏や興奮状態を引き起こすコルチゾールの生成を抑える働きもあるため「天然の精神安定剤」と言われています。

タンパク質が決め手

うつ病の症状がある人はミネラルだけでなく「タンパク質(アミノ酸)不足」に陥っているケースも少なくありません。前述したセロトニンを始め、心身をリラックスモードにしたり睡眠をサポートする「メラトニン」などの神経伝達物質は、アミノ酸からできています。また、不安感を抑えたりや好奇心の増強、情緒安定を促す働きがある「オキシトシン」などのホルモンも材料はすべてアミノ酸です。材料がなければもちろん神経伝達物質やホルモンが合成できないので、心の状態をコントロールすることが難しくなります。

 アミノ酸の中でも「トリプトファン」は特に神経伝達物質と関わりがあるため、うつ症状がある人は積極的に摂りたい栄養素です。食品では、豆腐や納豆などの大豆製品、卵、カツオやアジなどの青魚、レバーなどに多く含まれています。うつ症状には、他にもビタミンB群やビタミンCなども欠かせないので、タンパク質と合わせてビタミンを多く含む生の野菜をしっかり食べてカバーすることが大切です。

糖分の摂りすぎも注意

うつ病の改善には「糖質」にも目を向ける必要があります。糖尿病の方は糖尿病でない方と比べて、うつ症状を有する人が約2倍多いとされています。(出典:糖尿病情報センターHPより)糖の代謝異常である糖尿病患者のうつ病発症率の高さは、食事(主に糖質)とうつ病の関係を示唆していると考えられます。

また白米や精白した小麦、砂糖などを使った食品を食べると、血糖値が急激に下がる「低血糖症」に陥ることがあります。低血糖症は、一時的にうつ病と同じような症状(頭痛、動悸、吐き気、眠気、発汗、不安感)が起きるとされています。

以前と比べて「空腹感を感じ、間食が多い」「夕方につよい眠気を感じたり、集中力が落ちる」「体重の増減が著しい」「イライラや不安感が甘い物を摂ることでよくなる」などの変化がある人は、低血糖症の症状としてうつに近い反応が起こるかもしれません。

気分の落ち込みやうつ症状がある人は、タンパク質を中心にビタミンやミネラルの補給を心がけ、糖質の摂りすぎにならないよう食事を調整してみてはいかがでしょうか?

Topics 2022年12月号PDF