NPO法人日本がんコントロール協会の初めての試みとなる「こどもの心と身体の健康コンベンション」が、2023年4月15日、東京都千代田区の日本教育会館で開催されました。 オンラインでもLIVE配信され、5人の専門家が、近年増えている子どもの発達障害の問題点や解決策などを独自の視点で紹介し、参加者から感動の声が数多く寄せられました。
最初の演壇に立ったのは、精神医療現場で起きている人権侵害問題などに取り組む米田倫康さんです。米田さんは、子どもの発達障害は「医学とPRマーケティングによる情報が混在し、正しく理解されていない」と指摘します。「医療機関で発達障害と診断された大半が、症状はあっても原因がわからない『症候群』。医学的な原因とメカニズムがきちんと解明されている『疾患』とは違う」として、症候群に対して薬物治療を行なっている現状に危機感を示しました。 2022年に文部科学省が発表した全国調査で、小学生10・4%、中学生5・6%、高校生2・2%に発達障害の可能性との新聞記事を紹介し、「調査は担当教諭から見た“主観”がベース、医師の診断に基づくものではない」と、イメージやマーケティングに躍らされず、確かな情報を見極めることが「正しい理解」につながると強調しました。
続いては、発達が気になる子どもたちを対象に、早期介入セラピーなどに取り組んでいる茂木厚子さんです。茂木さんは、「2022年の学生自殺者数1063人のうち、小中学生の自殺者は514人。発達障害や不登校、いじめ、虐待、引きこもりなど、少子化が進んでいるのに子どもの問題は過去最多」と、日本の子どもたちが想像以上に深い闇の中にいる現実を伝えました。食生活や必要な栄養が取れていないことも子どもの発育、成長を妨げる要因として、大人は「子どもたちを変えようとするのではなく、子どもの発達段階に合わせ、集団目線ではなく『個』を見守ることが、健全な成長に必要」と述べ、私たち大人が変わることで、新たな解決策が見出せるとの期待を込めました。
午後の部は、日本がんコントロール協会の森山晃嗣理事長が口火を切りました。森山理事長は、子どもの成長・発達と栄養との関係について、長年取り組んできた正常分子栄養学の視点から解説しました。1912年にノーベル生理学・医学賞を受賞したフランスのアレキシス・カレル博士の「子どもの生命は遺伝子だけに左右されるものではなく、血液、細胞、体液にも記憶力がある」との研究を例に、脳や心は生涯にわたって発達すること。それゆえ体や脳に必要な食事や栄養として、タンパク質、脂質、ミネラル、植物栄養物質をどれだけ摂るかを挙げ、「栄養の欠乏が、子どもの生命と発育に影響を及ぼす」と、子どもの発達障害には正しい食事と栄養が不可欠との認識を示しました。
横浜市にある「すみれが丘ひだまりクリニック」の山本百合子院長は、アントロポゾフィー(人智学)医療から見た子どもの発育について講演しました。アントロポゾフィー医療とは、病気を治療するだけでなく、その病をもつ人の「人間性の回復と発展」「その人らしい人生への回帰」をめざすもので、人間を物質のレベル、生命のレベル、感情のレベル、精神のレベルの4つの構成要素から考え、そのバランスが崩れると病気になるとの考え方に立っています。山本院長は、子どもの発達を「0歳〜7歳、7歳〜14歳、14歳〜21歳の7年周期で捉え、それぞれの周期で自分の意志で自由に動かせる体を完成させていく」とし、触覚、生命感覚、運動感覚、平衡感覚などを意識して、さまざまな面から子どもたちの頭、心、体に働きかける発育について解説しました。
コンベンションの最後を締め括ったのは、栃木県那須烏山市国民健康保険七合診療所で自然派の医療を実践する本間真二郎医師です。本間医師は、全ての病気は不自然な食事と生活習慣に起因するとの認識に立ち、自然に沿った食事と生活で心と体の健康状態を保つ医療に取り組んでいます。その手段として、対症療法である西洋医学に頼らず、腸内細菌を元気にする食事、生活を心がけ、免疫力を高める重要性を力説しました。妊婦や体内で育つ赤ちゃんの腸内細菌が子どもの発育にも関係することにも触れ「人は生態系であり、微生物と共生している。口の中、腸内、常在菌の状態が健康にとって最も大切」だと語り、日本の伝統食や身土不二、発酵食品などを取り上げていました。
講演終了後、参加者から「発達障害の現実を知る機会になってとてもよかった」「どの先生の内容も素晴らしかった」などの声があがり、次回開催への期待が寄せられました。