梅雨明けが間近となり、暑い夏がやってきます。気温の上昇とともに、毎年この時期から増えるのが熱中症です。本格的な暑さを迎える前に体内環境を整えておくことが、熱中症の発症リスクを抑えることにつながります。今回は、今から取り組みたい暑さに負けない体づくりについてお伝えしましょう。
コロナ禍による行動制限が解除された昨年の夏は、例年と比べて熱中症患者が増加しました。2022年6月の熱中症による救急搬送者数は全国で15,969人で、2021年の4,945人と比べておおよそ3・2倍に増え、調査開始以来過去最多の件数が報告されています。(出典総務省消防庁 令和4年5月から9月の熱中症による救急搬送状況)
熱中症は、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能がうまく働かなくなることでめまいや頭痛、吐き気、けいれんなどのさまざまな症状を引き起こす病気です。一般的な予防法としてはこまめな水分補給やエアコンなどでの体温管理が挙げられます。
一般財団法人 日本気象協会は「熱中症ゼロへ」プロジェクト2023を推進しており、早めの対策として「暑熱順化(しょねつじゅんか)」を呼びかけています。暑熱順化とは「徐々に身体を暑さに順応させること」を意味し、暑さの本番を迎える前にウォーキングやジョギンク、適度な運動、入浴などで汗をかく習慣をつけて身体を慣れさておく熱中症対策の一つです。
私たちの身体には、環境に合わせて体温や水分調節をする機能があります。これらの働きは自律神経が担っており、正常に機能させるためにはビタミンやミネラル、必須脂肪酸、タンパク質など様々な栄養素が必要です。中でも、カリウムやマグネシウムなどのミネラルは、熱中症予防には欠かせない栄養素です。
カリウムは細胞内液の浸透圧を調整し一定に保つ働きがあり、不足すると細胞の脱水状態を招きます。マグネシウムは身体の表面から熱を逃す働きがあるため、体温調節に欠かせない栄養素といわれています。夏場は水分補給だけに意識が行きがちですが、汗と一緒に失われるミネラルをカバーすることを忘れてはいけません。
貧血気味で鉄が不足している人も要注意です。鉄には全身の細胞に酸素を運ぶ役割があるため、不足すると酸欠状態になり熱中症のリスクが高まるとされています。ミネラルが摂れる食品の代表は、野菜や果物、海藻類、豆類です。鉄分に関しては、レバーや赤み肉、マグロなどに含まれているので、熱中症予防のためにも日々の食事で意識的に食べると良いでしょう。
貧血予防の面では、鉄分やタンパク質が多い食品はもちろん、大麦若葉や緑黄色野菜を摂ることもポイントとなります。緑の濃い植物や野菜に多く含まれる色素成分の「クロロフィル」は、人間の血液成分の一つである「ヘモグロビン」とほとんど同じ分子構造をしています。摂取したクロロフィルは体内でヘモグロビンへと変わるため、貧血の改善や血液の質の向上、体内の酸欠予防に役立つと考えられています。
また、水分補給で注意するべきポイントは「過剰な糖質を摂らないこと」です。スポーツドリンクをはじめとする糖質が多く含まれた清涼飲料水は、補給すればするほどかえって低血糖症などに陥りやすくなります。過度な糖質の摂取による急激な血糖値の変化は、臓器や神経に大きな負担をかけます。その結果、めまいや頭痛、手足の震えといった熱中症に似たような症状を招き、さらには集中力や意欲の低下、うつ症状など精神面への悪影響も起きるとされています。スポーツなど激しい運動をしない日常的な水分補給は、糖質が含まれない真水がおすすめです。
本格的な暑さを迎える前の栄養対策が熱中症のリスクヘッジにつながります。水分補給と栄養補給を心がけ、夏の暑さに負けない身体を維持してください。