東京で生まれ育ったSさんは、明るい語り口調が印象的な女性です。長年、アレルギー性の病気に苦しんだとは思えないほど、健康的な笑顔が輝いていました。
ところが30年余り、彼女は人には言えないほど様々な症状と格闘し続けてきたのです。Sさんは、三人姉妹の末っ子。二人の姉に比べれば、自由で気ままに育ったそうですが、2~3歳のころから肌や体が弱く「アトピーで耳たぶが切れたり、花粉症、ぜんそく、扁桃腺炎などでよく病院に通った」といいます。両親は健康で、わずかに父親が花粉症の薬を飲んでいた程度。二人の姉もアレルギー性の病気はなく、どういうわけかSさんだけが一人、病弱でした。
小学校時代、記憶にあるのは顔や手足の関節部分のアトピーの症状でした。4年生の頃、プールで泳いだ後、塩素の影響で皮膚が痒くなり、医師からアトピー性皮膚炎と診断され、ステロイドを処方されます。目にモノもらいができやすく、ワクチンを打って倒れたり、学校を早退することもありました。ほかにも歯ぐきに膿がたまる、猫アレルギーで猫に近づけない。お風呂の石鹸で体を洗うと湿疹が出るなど、さまざまな症状に悩まされます。
はっきりした原因はわからないようですが、一つ考えられるのは食生活です。聞けば、幼少の頃から極端な偏食で「母の手料理をあまり口にしない」子どもで、麺類や加工食品、チョコやスナック菓子、甘いジュース、コーンスープなどのインスタント食品を好んで食べていたそうです。果物は好きですが、野菜はほとんど摂らない。近所におばあちゃんがいて、そこでも「好きなモノばかり食べていた」と振り返っています。
そんな食事が体に良いはずはありません。中学に入っても変わらず、アトピーの症状がひどくなり「顔が痒くて、掻いたあとが残る」ようになったり、高校の頃には「洗剤の柔軟剤が合わなかったのか、服や肌着からも痒みが出るほど」だったそうです。そのほか、腎盂腎炎も何度か経験しています。学校では「いつもお腹が空いて、皮膚の湿疹や痒みでイライラしていた」と語っています。
ただ、薬で一時的に良くなることから、あまり重症化しなかったのはまだ不幸中の幸いでした。とはいえ、人生の多感な時期に健康状態に不安を覚え、落ち込むことはなかったのかといえば嘘になるでしょう。
社会人になっても、自分の状態と付き合いながら一進一退のまま日々を過ごします。その後、28歳で第一子を出産。その子は生まれてすぐアトピーの症状が出て、医師からステロイドを処方されます。
Sさんと子どもはこの後どうなっていくのか、続きは次号でお伝えします。