アトピー性皮膚炎は、手、首筋、膝裏や脇の下などに湿疹ができるアレルギー性の疾患です。多くは乳幼児期に発症しますが、成人での発症例もあり、一度治ったように見えてまた再発することもあります。
主人公の男性Kさんも生後3ヶ月で、赤い湿疹が身体中にできたのが始まりでした。現在20代後半ですが、人生のほとんどをこの病気と向き合ってきました。Kさんの母親は、医師から「アトピーですね」と診断を受け、ステロイド薬を処方されます。以来、Kさんの患部に湿疹が出たら薬を塗る、を繰り返していきます。
アトピーは、原因や症状には個人差がありますが、一般的には皮膚のバリア機能が低下した乾燥状態の時に、ダニやほこり、食べ物、ストレスなどの環境的因子が重なって起こると考えられています。Kさんの母親がアレルギー性鼻炎、父親が乾燥肌だったことも関係したのかもしれません。
ともあれ、薬を塗ると痒みがおさまることから、子どもの頃はあまり深く考えないで成長していきます。皮膚科で症状を訴えると、医師は薬を処方したそうです。ステイロイドは、度合いによって5段階に分類されます。当初は軽い塗り薬でしたが、効きにくくなるにつれて2段階、3段階と強いステロイドを処方したのかもしれません。
ステロイドは、副腎皮質ホルモンの一つで、薬としては体の中の炎症を抑えたり、免疫力を抑制したりする作用があります。しかし長く使っていると血管が拡張したり、副腎皮質ホルモンの合成がうまくできなくなるなどの副作用も指摘されていました。
中学に入ると、ステロイドの副作用を懸念して、使用頻度を控えるようにしました。するとKさんのアトピーは徐々に悪化し始めます。アトピーの改善には、保湿などのスキンケアやバランスの取れた食生活も重要です。Kさんの母親は、食事や栄養に気を使ってくれたそうですが、小中学時代はサッカー少年で食べ盛りだったKさんは、多少糖質は気にしていたものの、白米やスナック菓子、スポーツドリンクなどは摂っていたそうです。
ステロイドの副作用もあってか首、顔、腕、全身に湿疹がドバッと広がり、かゆみで眠れないほどに悪化しました。親ともあまり口をきかなくなり、体調不良で学校にも行かない。そんな日々が続くと、さすがに強い薬に走りたくなります。しかしこれ以上ステロイドを使うと、皮膚は再生できないし、人前にも出られない体になる。Kさんはそう考えて、ある日ステロイドの使用をキッパリやめる決心をします。しかしそこからも、壮絶な痒みとの闘いが始まるのです(つづく)