首都圏に住む70代の女性は、今から15年前のゴールデンウィークに突然、体の異変に襲われます。全身がガクガクして立っていられなくなってしまうのです。当時女性は、ママさんバレーの指導者でした。現場で汗を流し、仕事先の会議に出席しようと思った矢先のことです。
なんとか体を動かせたので、やっとの思いでかかりつけ医にたどりつきます。ところが、先生から「真っ直ぐ歩けるし、話もちゃんとできるので心配ない」と言われ、検査もしないまま高血圧を抑える降圧剤などを処方してもらって自宅に帰ります。
それから数時間後、女性は右手、右足が動かせなくなり、急いで救急車を呼びます。大きな総合病院に搬送されますが、不運にもゴールデンウィーク期間中で正式な検査は一週間後と告げられます。そして検査後に初めて「脳梗塞」と診断されるのです。
脳梗塞は、脳の血管が突然詰まって血流が途絶え、脳の神経細胞が死んでしまう病気です。一旦脳梗塞を起こすと、脳の細胞は再生が難しく、重大な後遺症が残ったり、生命に関わることもあります。症状にもよりますが、一般的には発症から「3時間以内」に血栓溶解剤を使って血栓を溶かし、血流が戻ることで症状の改善を図る治療が行われます。
もし初期段階で脳梗塞と診断されていれば、女性の状態は変わっていたかもしれません。MRI検査を行うころには徐々に腕が動かなくなり、結果的に長く後遺症が残ってしまいます。
若い頃からスポーツウーマンで、体力に自信があった女性は「お酒好き」で、おつまみも「濃い味を好んだ」そうです。そのせいか血圧が高く、食生活がリスク要因のひとつになっていたことは否めません。
健康に自信があった女性ですが、病気になったことで精神的に落ち込み、丸3年間は自宅に引きこもりがちの生活を送ります。しかし4年が経過した頃から「このままではいけない」と奮い立ち、家族から紹介されたリハビリ専門医の指導で回復を目指します。2018年の春には、栄養面にも力を入れ始めました。
降圧剤など4種類の薬の服用とリハビリ中心の治療を受けていた女性は、身体機能の回復を目指し、自己診断で病院の処方薬を全て辞め、栄養補給と徹底した食事管理を始めました。そして「病気前の日常」を取り戻すまでになっていくのです。どのような取り組みをしたのか、詳細は次号に続きます。