50代前半のT子さんは、2017年の暮れに近くの病院で「進行性の胃がん」と診断されました。担当医から「腫瘍は5センチ以上。紹介状を書きますからすぐにでも大きな病院で手術を受けた方がいい」と告げられます。
状態から推測されるのは、転移への懸念です。手術が遅れればリスクは高まります。とはいえ仕事を持っていて、家庭では認知症の親の介護を抱え、さらにこの年首都圏で雪が降るなど想定外の出来事も重なり、T子さんは病院に行きたくても行けない日々が続きます。
T子さんは「次の手術前検査までの1ヶ月半の間に、少しでも状態を改善できないか」と考えます。救いの手を差し伸べてくれたのが、10年ほど前に子宮筋腫を患った際、栄養指導で病気を改善に導いてくれたボタニック・ラボラトリーの森山先生でした。T子さんは、診断を受けたその日にすぐに連絡を取り、森山先生の指導のもと徹底した栄養療法に取り組みはじめます。
そうして手術前の内視鏡検査に臨んだところ、5センチ以上あった腫瘍が、なんと2センチにまで縮小していました。がんは発見時より明らかに小さくなっていたのです。
結果を受けて、どうしても手術をしたくなかったT子さんは担当医に胸の内を訴えます。「これだけがんが小さくなったのですから、手術をもう少し先延ばしできないものですか?」
担当医は、検査結果に首を傾げながらも、再検査を条件に、手術を1ヶ月ほど延期することに同意します。T子さんの健康状態が、医師の気持ちを動かしたのです。
しかし、その後T子さんは、担当医の異動や階段からの転落による体の不調なども重なって、しばらく手術ができない状態に追い込まれますが、栄養療法には取り組み続けていました。事態がようやく落ち着いた頃、近くのクリニックに事情を説明し、栄養状態と腫瘍マーカーを調べてもらいます。すでに1年近くが過ぎた2018年の秋のことです。
結果は「そのへんの健康な人より栄養状態はいい。腫瘍マーカーも低いから大きくなっている心配はないでしょう」。それでも正確な診断を受けるために、2019年夏、専門医のいる病院で胃の内視鏡検査をしたところ「すごいきれいですよ。がんは陰も形もない」と知らされます。発見から2年近くを経て、なんとがんは手術しないまま完全に消えていたのです。(続く)