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Seminer

薬では治せない脂肪肝を、食事と栄養で改善!

Doctor's Column2020.5

病気の予防や治療には、食事や栄養も重要な働きをしています。今回は、糖尿病の合併症である「肝機能障害」を、薬ではなく食事と栄養の取り組みを行って改善した女性のケースを紹介しましょう。

前号で、糖尿病を患った60代の女性(都内在住)が、徹底した食事療法で改善した事例を紹介しました。この女性は、糖尿病と同時に肝機能にも障害を起こしていました。 肝機能が正常かどうかは、血液検査でわかります。よく知られるのは、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ―GTPなどの値です。AST、ALTは、肝細胞によって作られる酵素で、何らかの要因で細胞が壊れると血液中に放出されます。AST、ALTの値が高いと、肝機能障害やさまざまな病気が疑われます。

健康な人のAST基準値は、7~38 IU/Lですが、患者さんは当初67と高い数値を示していました。一般的に、ASTの値が35を超えると、肝臓に対するダメージが自己再生能力を上回っていると考えられます。女性は肝機能障害とともに、肝臓内に余分な中性脂肪が蓄積する「脂肪肝」の状態だったのです。脂肪肝は、過剰な飲酒や肥満など生活習慣が原因で、女性は飲酒はないものの、1日3食の他にアイスクリーム、菓子パンやうどん、甘いジュースが大好物など糖質に偏った食事をしていました。

脂肪肝は、現在のところ有効な薬はないとされています。しかも放置したままにしておくと、約15%の人は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に進展し、肝硬変になり、肝臓がんができやすくなることがわかってきています。肝硬変になると、治療をしても元の状態に戻るのは難しいとされています。この女性は薬物治療では改善が見込めないことから、徹底した食事管理と栄養摂取を続けました。

脂肪肝は、炭水化物や糖質の取りすぎが主因なので、1食あたりの食事量を減らし、糖質を極力控えて、肉や魚などのタンパク質、ビタミン、ミネラルが豊富な野菜を摂るようにしました。すると1ヶ月後からみるみる数値が下がり、わずか4ヶ月で基準値に戻すことができたのです。

医療の世界では脂肪肝は改善しない、というのが常識のようで食事や栄養についても実態は「患者任せ」です。

女性は、治らないとされている脂肪肝を改善できただけではなく、放置すれば肝硬変や肝臓がんになりかねないリスクも、未然に防ぐことができたと言えるのではないでしょうか。

私の栄養スイッチ 2020年5月号PDF