東京都内在住の飯塚信夫さんは今から2年前の冬、仕事中に突然腹部に痛みを覚えます。数日前から下痢が続き、なんとなく違和感があったことに思い当たります。それまで風邪ひとつ引いたことがなく、若い頃からゴルフやスキーをはじめスポーツが得意で、70歳になっても仕事を続けるなど健康には自信をもっていました。
それだけに奥さんの京子さんも気がかりだったのでしょう。本人が「お腹の調子が悪くて…」と打ち明けると、すぐに自分がかかっているクリニックに行くことをすすめます。クリニックの主治医がエコ—で信夫さんのお腹をみると、後腹膜に大きな影がありました。精密検査を受けなくとも”がん“だとわかるほどだったそうです。
近くの総合病院を紹介され、CTを撮って改めて画像を見てみると「後腹膜にできた腫瘍」だとわかりました。後腹膜がんとは、腹部の背中側にある後腹膜に発生する腫瘍の総称で、年間の新規発症者は10万に1人ともいわれる非常に稀ながんです。後腹膜には、腎臓や尿管・膀脱などの臓器や、一部の消化管、腹部大動脈・下大静脈といった大血管なども存在するため治療が難しいとされています。
検査結果の当日、信夫さんは仕事が休めないことから、奥さんと息子さんが話を聞きに行きました。がんはすでに大きくなっており、医師から「がんのある位置が悪く、手術はできないし、大きすぎて抗がん剤治療で消滅させるのも難しい」と言われたそうです。そればかりか、ステ—ジ4でこのまま放置すれば「余命は2ヶ月ぐらい。明日死んでもおかしくないほど深刻な状態」とまで宣告されるのです。
衝撃でした。まさか。どうしよう。信じられない。奥さんと息子さんが受けたショックは計り知れません。それでも冷静になろうと、奥さんは必死で自分を奮い立たせます。
そのときに思い出したのがボタニック・ラボラトリーでした。ボタニック・ラボラトリーが提唱する正常分子栄養学に共鳴し、食事や栄養の大切さを感じていた奥さんは、藁にもすがる思いで相談します。
「糖質と塩分はいっさいやめて、まず体をケトン体質に切り替えましょう」と提案され翌日からさっそく実施に移します。信夫さんはむかしイタリアンのシェフをしていたことがあり、自分で料理をしたり野菜を多めに摂る食事を心がけていました。ただ仕事の都合上、朝早く夜は11時過ぎに戻ってから食事という生活を長年続けていました。ご飯や甘いものが大好きで、おまけにヘビースモーカーでもあったようです。
そんな人が果たして過酷な食事制限を続けられるでしょうか?ところが半年後、腫瘍マ—力—の数値は急激に下がっていたのです。(つづく)