正常分子栄養学®とは
正常分子栄養学は、カロリーではなく私たちの身体に必要な栄養素を重要視した、現代人のための新しい栄養学です。
正常分子栄養学®とは
正常分子栄養学は、カロリーではなく私たちの身体に必要な栄養素を重要視した、現代人のための新しい栄養学です。
あなたはあなたが食べたものでできています。考えてみれば当然のことですが、意外と見過ごされがちなことではないでしょうか。
皮膚も、筋肉も、髪も、臓器も……私たちの肉体の全ては、食べたものや飲んだものでしかつくられないのです。
この事実に着目し「実際に体を形作っている栄養素とは何か」を考えた至ってシンプルな栄養学。
それが「正常分子栄養学®️」です。
「正常分子栄養学®︎」は、ビタミンBの一種であるパントテン酸を発見したアメリカの生化学者ロジャー・J・ウィリアムズ博士やビタミンCの研究で知られるライナス・ポーリング博士などが取り組んだ「分子矯正医学」を基礎にしています。
そのうえで現代人の食生活や生活環境を考慮して、必要な栄養とは何かを研究し、実践し、誕生しました。
毎日の食事で体に必要な栄養素を過不足なく摂り入れ、それらが正しく消化・吸収されることで、健全な体がつくられる。そのためにはまず、栄養素について正しく理解することが大切です。もっとも見落とされがちなのが「栄養素は単独では働くことができない」こと。
様々な栄養素は、互いにバランスを保ちながら連携してひとつのチームとして働きます。ミネラルがなければ、アミノ酸も脂質も代謝できません。何か一つでも栄養素が欠けたり不足したりすると、体の健康レベルは下がってしまいます。
これをロジャー・J・ウィリアムズ博士は「生命の鎖理論」と呼びました。
私たちの体に必要な栄養素は、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、植物栄養物質(ファイトケミカル )の5つです。重要なことはこの栄養チームに「糖質」が含まれていないことです。現代人の食事は糖質に偏っていて、その代謝に必要なビタミンやミネラルが極端に不足していると考えられます。
このアンバランスが、がんや糖尿病、アレルギーなど様々な現代病の温床になっているともいえます。「体に必要な栄養チームを過不足なく取り入れることで、病気にならない健康な体を手にすることができる」。これが正常分子栄養学の基本的な考え方なのです。
炭水化物として分類される「白米」と「玄米」は、カロリーでみると、ほとんど同じです。しかし、実際に含まれている栄養素で見てみると大きな違いがあります。玄米の胚芽の部分には、ビタミンやミネラルが残っていますが、精白された白米には残っていません。つまり、白米は純度の高い糖質で、栄養的にみると体をつくる5つの栄養チームがほとんど含まれていないのです。白米やパン、麺類を主食としている現代の日本人は、糖質の過剰摂取やビタミン・ミネラル欠乏に陥りやすく、結果として様々な体調不良を起こしていると考えられます。
カロリー栄養学で悪者扱いされやすいのが「脂質」です。しかし、脂質には、脂質にしかできないは重要な働きがあります。とくに体で合成できない必須脂肪酸は、細胞膜やホルモンの材料になるなど必要不可欠な栄養素です。それゆえ、毎日の食事で積極的に取る必要があります。カロリーとは単に「代謝により消費する熱量の計量」。この数値が高いという理由だけで脂質をさけていると、肝心の「体をつくる材料」が不足してしまいます。高カロリーを理由に脂質を摂取しないことは、栄養的にはとても危険なことなのです。
現在、日本で教えられている栄養学は、カロリー計算を中心に置いた「カロリー栄養学」です。カロリー栄養学は、日本がまだ今ほど豊かではなく「生きていくのに必要なカロリーを満たすこと」が優先されていた時代に必要とされた考え方でした飽食ともいわれる現代において、カロリーだけで食事や栄養のバランスを決めてしまうと、様々な矛盾や問題点が浮かび上がってきます。
戦前の日本の食環境は今ほど豊かではなく、十分に栄養が摂れず栄養失調に陥る人も少なくありませんでした。
戦後、急激な経済発展を遂げた日本は、飽食の時代ともいわれるように多くの食品が普及しました。食の欧米化も進み、ファストフードやファミリーレストランが台頭し、日本人の健康を支えてきた伝統的な日本食も食卓に並ぶ機会はめっぽう減ってしまいました。食べるものは増えましたが、肝心な栄養が摂れない時代。この食の変化が、現代人の健康を脅かす原因の一つになっていると考えられます。
例えば、今の日本の野菜は、農薬や化学肥料を使用して作られたものが多く、その結果、野菜に含まれる栄養素は年々減り続けています。
以下の表は、戦後間もない1950年と現代(2015年)の野菜栄養価を比較した表です。ニンジンの栄養量を見てみると、100gあたりに含まれるビタミンAの量は50年前のニンジンの6分の1ほど。50年前のニンジン1本と同じだけの栄養を摂取しようと考えたら、6本くらい食べなければならないということになります。
単位 μg/100g mg/100g
品名 | 栄養素名 | 1950年 | 2015年 |
---|---|---|---|
にんじん | ビタミンA | 4,455μg | 720μg |
ほうれん草 | ビタミンC 鉄 |
150mg 13mg |
35mg 2mg |
セロリ | ビタミンB1 | 0.8mg | 0.03mg |
にら | 鉄 | 19mg | 0.7mg |
小松菜 | ビタミンC | 90mg | 39mg |
アスパラガス | ビタミンB2 | 0.3mg | 0.15mg |
しその葉 | ビタミンC ビタミンA |
85mg 6600μg |
26mg 880μg |
キャベツ | ビタミンC | 80mg | 41mg |
かぼちゃ | カルシウム | 44mg | 20mg |
にんにく | カルシウム | 90mg | 14mg |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
出典:日本食品標準成分表
実際には、ニンジンを頑張って食べようとしても、せいぜい1日に1本か2本が限界でしょう。ですから、「必要な栄養素をどのように摂っていくか」を真剣に考えなければいけない時代なのです。
「生野菜は身体を冷やすので、温野菜を食べましょう」という説が流布していますが、これは誤りです。野菜に含まれる酵素やビタミンなどの栄養素の多くは、茹でるなどの加熱調理をすることで大幅に減少してしまうからです。
以下の表は、野菜の生の状態と茹でた状態の栄養素の変化を記録したものです。これを見ると、ほとんどの栄養素が調理後に栄養素が減少していることが分かるでしょう。
食品名 | カリウム | カルシウム | マグネシウム | α-カロテン | ビタミンB1 | ビタミンB2 | ナイアシン | ビタミンB6 | 葉酸 | パントテン酸 | ビタミンC |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
単位 | mg/100g | mg/100g | mg/100g | µg/100g | mg/100g | mg/100g | mg/100g | mg/100g | µg/100g | mg/100g | mg/100g |
カリフラワー 生 | 410 | 24 | 18 | 0 | 0.06 | 0.11 | 0.7 | 0.23 | 94 | 1.30 | 81 |
カリフラワー ゆで | 220 | 23 | 13 | 0 | 0.05 | 0.05 | 0.2 | 0.13 | 88 | 0.84 | 53 |
キャベツ 生 | 200 | 43 | 14 | 0 | 0.04 | 0.03 | 0.2 | 0.11 | 78 | 0.22 | 41 |
キャベツ ゆで | 92 | 40 | 9 | 0 | 0.02 | 0.01 | 0.1 | 0.05 | 48 | 0.11 | 17 |
こまつな 生 | 500 | 170 | 12 | 0 | 0.09 | 0.13 | 1.0 | 0.12 | 110 | 0.32 | 39 |
こまつな ゆで | 140 | 150 | 14 | 0 | 0.04 | 0.06 | 0.3 | 0.06 | 86 | 0.23 | 21 |
にら 生 | 510 | 48 | 18 | 0 | 0.06 | 0.13 | 0.6 | 0.16 | 100 | 0.50 | 19 |
にら ゆで | 400 | 51 | 20 | 0 | 0.04 | 0.12 | 0.3 | 0.13 | 77 | 0.39 | 11 |
ブロッコリー 生 | 360 | 38 | 26 | 4 | 0.14 | 0.20 | 0.8 | 0.27 | 210 | 1.12 | 120 |
ブロッコリー ゆで | 180 | 33 | 17 | 0 | 0.06 | 0.09 | 0.4 | 0.12 | 120 | 0.78 | 54 |
ほうれんそう 生 | 690 | 49 | 69 | 0 | 0.11 | 0.20 | 0.6 | 0.14 | 210 | 0.20 | 35 |
ほうれんそう ゆで | 490 | 69 | 40 | 0 | 0.05 | 0.11 | 0.3 | 0.08 | 110 | 0.13 | 19 |
みずな 生 | 480 | 210 | 31 | 0 | 0.08 | 0.15 | 0.7 | 0.18 | 140 | 0.50 | 55 |
みずな ゆで | 370 | 200 | 25 | 0 | 0.04 | 0.08 | 0.4 | 0.10 | 90 | 0.29 | 19 |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
特に注意が必要なのは電子レンジによる調理です。欧米各国の研究報告(※)によれば、人体に必要なアミノ酸は電子レンジによって自然なL型から人体に使えないD型へと変容してしまうと言います。またこの研究によると、電子レンジ調理では全ての食べ物において、ビタミンB群、ビタミンC,ビタミンE、基礎ミネラル分、脂肪動員成分の生体使用率(体が栄養素を利用する能力)が低下することがわかっています。更には、牛乳や穀物を電子レンジで温めた場合、蛋白質加水分解成分の中に、発がん性物質が形成されることも報告されています。
(※)原文:『The Hidden Hazards of Microwave Cooking』by Anthony Wayne and Lawrence Newell
(『電子レンジ調理の隠された危険』アンソニー・ウェイン、ローレンス・ニュウェル 著)
出典:Mercola.com
体の健康を維持するためには、栄養をバランスよく摂取して「いのちの鎖®」をしっかりつなぐことが大切です。私たち人間が成長し、生命活動を維持するためには、最低でもこれらの栄養素が必要です。
しかし、ここで注意すべきは「栄養素の必要量は一人ひとり違う」ということです。性別や年齢、体格、体質、生活環境などによって必要な栄養素の量は変わってくるため、むやみに誰かの真似をしてもうまくいくとは限りません。食事を変えたり、サプリメントで補給するなど栄養の摂取量をコントロールして、自分自身の体の状態を観察することが大切です。
医学の進歩によって平均寿命が延びている現代の日本ですが、本当に大切なのは健康的に自立して生活できる「健康寿命」です。正しい食と栄養の知識を身につけ、実践することで、末永い健康ライフを満喫しましょう。